
週末ウマさんぽをご覧いただきありがとうございます、ナギです。
さて、乗馬を始めて少し経つと、必ずと言っていいほどぶつかる壁が今回のテーマではないでしょうか。
うまく立てない、タイミングが合わない、手前が分からないといった悩みを抱え、なかなかコツが掴めずに乗馬の軽速歩ができないと落ち込んでしまう方も多いはずです。
私も最初は、馬の反動で何度も鞍にお尻を打ち付けてしまい、足の位置が定まらず激しい筋肉痛に悩まされた経験があります。
この記事では、私が実際にレッスンで学んだことや、試行錯誤して気づいた生体力学的なメカニズムなどを、同じ乗馬仲間としての目線で分かりやすくお伝えします。
少しでも皆さんの悩みが解決し、もっと馬との時間を楽しめるようになれば嬉しいです。
- 乗馬の軽速歩における基本的な仕組みと正しい姿勢の作り方
- うまく立てない原因とタイミングを合わせるための具体的なコツ
- 手前の見分け方や足の位置など初心者がつまずきやすいポイントの解決策
- 鐙を外す練習や自宅でできるトレーニングなど上達に向けた応用練習
乗馬の軽速歩をマスターする基礎知識
まずは、乗馬の軽速歩における基本的な生体力学的メカニズムや、初心者が押さえておくべき身体制御のポイントを整理していきましょう。
頭で理論を理解しているつもりでも、いざ馬の上にまたがると地球の重力や前進する推進力に逆らえず、体がうまく動かないことはよくあります。
ここでは、なぜうまく立てないのか、骨盤の正しい位置や重心線の維持はどうすればいいのかといった、全ての土台となる基礎的な部分から順を追って詳しく解説していきます。
初心者が知るべき仕組みとコツ

乗馬を始めて最初の大きな壁となるのが、この走り方です。
馬の速歩(トロット)は、右前脚と左後脚、左前脚と右後脚というように、対角線上の脚がペアになって交互に地面を蹴り出す「二拍子」のリズムを持っています。
この時、馬の四肢がすべて空中に浮く「空間期」という瞬間が存在するため、馬の背中には非常に力強い上下の反動が生まれます。
もし私たちが鞍に深く座ったままこの揺れに耐えようとすると、強力な反発力によってお尻が不規則に上方へ跳ね上げられ、ガクガクと激突してしまう物理的な現象が起きてしまいます。
これを防ぎ、騎手と馬の双方がスムーズに運動を続けるための必須テクニックが、今回テーマにしている技術なのです。
具体的には、馬の「1、2、1、2」という二拍子に完全にシンクロし、リズムに合わせて骨盤を浮かせ(立ち)、再び着座する(座る)という上下運動を繰り返します。
この動作の最大の目的は、馬の背中にかかる衝撃を和らげ、同時に人間側の乗り心地も安定させることにあります。
生体力学的な観点から見た目的

私が初心者の頃は、とにかく落馬しないように必死でしがみついていましたが、実は生体力学的に見ても、騎手の体重負荷を周期的に抜くことで、馬の背筋(最長筋など)の過度な緊張をほぐすという重要な役割を担っています。
人間が馬のエネルギーと調和して動くことで、馬自身もリラックスして背中を使い、歩幅を前へ大きく伸ばすことができるようになるのです。
コツとしては、自分の脚の筋力だけで無理やり立ち上がろうとしないことです。
馬の背中から伝わってくる「ポンッ」という突き上げの推進エネルギーを受動的に利用し、自然に腰を浮かせることが重要になります。
頭では分かっていても体現するのは難しく感じるかもしれませんが、まずは馬の動きを邪魔せず、一緒に呼吸を合わせるようなイメージを持ってみてください。
あくまで乗馬クラブの指導員の方々に教わる内容が基本となりますので、まずは日々のレッスンでの感覚を大切にしながら、馬の背中の動きに意識を集中させてみましょう。
馬の対角線上の足がペアになって動くリズムに合わせ、空中に浮くタイミングで人間も一緒に立ち上がるイメージを持ちましょう。
立てない原因と骨盤の正しい位置

「馬が揺れてうまく立てない」「どうしてもリズムに遅れてしまう」という悩みの多くは、座っている時の重心の置き方や骨盤の角度に原因が隠れています。
私自身もこの罠に陥っていましたが、鞍に対してお尻全体をベッタリとつけて深く座り込んでしまうと、馬の反動を吸収する余裕(サスペンション機能)が完全に失われてしまいます。
その結果、次の反動が来た際に、一から自分の太ももの筋力を使って立ち上がらなければならなくなり、リズムに遅れてバタバタとした動きになってしまうのです。
坐骨による点接触の意識

正しい座り方のコツは、お尻全体ではなく、骨盤の下部にある「坐骨(ざこつ)」を意識し、点で接するように浅く座ることです。
骨盤を立てて坐骨で鞍に触れることで、馬体から伝わる運動エネルギーを遅れることなく感知し、次の「立つ」動作へとロスなく移行できるようになります。
さらに、立ったり座ったりを繰り返す中で、体の側面にある「耳、肩、腰、かかと」を結んだ仮想の垂直線(重心線)が、常に地面に対して真っ直ぐ保たれていることが求められます。
このバランスが崩れると、余計な筋力が必要になり、たちまち姿勢が崩壊してしまいます。
初心者が最も陥りやすいエラーは、上半身の過度な前傾です。馬が前に進んでいる時に上半身を倒すと、重心が前輪(馬の前脚)にのしかかり、バランスを崩す原因になります。常に「頭のてっぺんを上に引っ張られている」ような意識を持ちましょう。
Z軸に対する垂直な重心線

具体的なイメージとして、「頭は真上へ、おへそは前へ」という意識を反復して持つと効果的です。
顔のすぐ前に見えない壁があるような感覚を持ち、頭だけが前方に突っ込んでお腹が後ろに残る「くの字」の姿勢を回避してください。
背骨の自然なカーブを維持したまま、垂直方向(Z軸)にだけエネルギーを逃がすことが、安定して立ち上がるための絶対条件となります。
この感覚を掴むまでは苦労しますが、骨盤の位置と重心線が決まれば、見違えるほど立ちやすくなるはずです。
立つ座るタイミングの合わせ方

タイミングの合わせ方は、多くの初心者がつまずくポイントであり、私も何度も指導員から「遅れてるよ!」と指摘された苦い経験があります。
「立つ、座る、立つ、座る」という速いリズムに遅れないようにするには、馬の動きに集中しすぎず、自分の体でリズムを刻むことが大切になります。
いつでも立てるインナーマッスルの準備
座る瞬間も、お尻を鞍にドスンと落として腰の緊張を完全に解いてしまうのではなく、次の反動に備えて「いつでも立てる状態」を深層筋(インナーマッスル)にキープしておくのがコツです。
私が意識しているのは、「深く座りすぎない」という点です。
ほんの一瞬だけ鞍に触れて、すぐにまた立ち上がるような感覚、つまり「すぐに立つ」という意識を脳内で先行させておくと、馬の速いリズムにも遅れずについていけるようになります。
また、下半身だけでなく、上半身のコントロールもタイミングを合わせるためには不可欠です。
小指の緊張緩和と弾力的なコンタクト
特に、手綱を持っている拳が体の上下動につられて一緒に動いてしまうと、ハミを通じて馬の口に不快な衝撃を与え、馬の走るリズム自体を乱してしまいます。
これを防ぐための最大の秘訣が「小指の緊張を解くこと」です。
解剖学的な運動連鎖の観点から、手綱を握る際に小指にギュッと強い力を入れてしまうと、前腕から二の腕、さらには肩関節まで連鎖的に筋肉が硬直してしまいます。
親指を主体に手綱を保持し、小指側を意図的に緩めることで、肘や肩の関節に柔らかいクッション性が生まれ、馬の口元に対してゴムのように弾力的なコンタクトが保てます。
腕の力が抜けることで全身の動きがスムーズになり、結果的に立つ座るのタイミングも自然と合ってくるのです。
手前を合わせる理論と判別法
軽速歩を練習していくと、必ず「手前(てまえ)を合わせる」という言葉を耳にするようになります。
これは単なるルールの話ではなく、馬術的にも生体力学的にも非常に重要な意味を持つ同調運動の核心です。
馬がカーブや円運動をする際、遠心力に耐えてバランスを保つため、内側の後脚には非常に大きな負荷がかかります。
「手前を合わせる」とは、この最も負担が大きくなる内側の後脚が地面を力強く蹴り出す瞬間に、騎手が鞍から骨盤を浮かせ(立ち)、馬の物理的な負担を軽減してあげる思いやりの技術なのです。
手前を合わせる生体力学的な理由

例えば、左回り(左手前)で走っている時は、馬の「外側の前脚(右前脚)」が前方に振り出された瞬間に立ち上がります。
前脚の動きは後脚の動きと連動しているため、外側の前脚が出るタイミング=内側の後脚が踏み込んでいるタイミング、となるわけです。
この理屈を理解しておくと、なぜそのタイミングで立たなければならないのかがスッと腑に落ちるはずです。
| 進行方向 | 立つタイミング | 座るタイミング |
|---|---|---|
| 左回り(左手前) | 外側(右前脚)が前に出た時 | 内側(左前脚)が前に出た時 |
| 右回り(右手前) | 外側(左前脚)が前に出た時 | 内側(右前脚)が前に出た時 |
正しい手前の判別法と修正のコツ

実際に騎乗している時は、馬の肩甲骨の動きを視覚的にほんの僅かに見下ろすことで、どちらの脚が前に出ているかを判別できます。
もしタイミングが逆(誤った手前)になってしまった場合は、慌てる必要はありません。
一時的に上下動のリズムを崩し、「座る、座る」と2回連続でお尻をポンポンと鞍につければ、位相がズレて簡単に正しい手前へと修正することができます。
最初は肩の動きを見る余裕すらないかもしれませんが、慣れてくると馬の背中の動きを感じるだけで、自然と手前が合っているかどうか分かるようになっていきます。
脚の固定と下半身の安定について

下半身の安定は、騎乗中の姿勢を決定づけるアンカー(錨)のような役割を果たします。
脚の位置は常に「腹帯(はらおび)のすぐ後ろ」にキープし、立ったり座ったりする激しい運動の最中においても、この位置が前後左右にブレてはいけません。
下肢の固定とカウンターウェイト
もし脚が前方へ突っ張ってしまうと、上半身に対する重りとして働き、結果的に上体が後方へ倒れる原因となります。
逆に脚が後ろへ流れれば、上半身は支えを失って前へとのめり込んでしまいます。
常に所定の位置に脚を留めておく意識が不可欠です。
また、多くの方が誤解しがちですが、立ち上がる際の動力源は、鐙(あぶみ)に全体重を乗せて踏ん張る力ではありません。
鐙への踏ん張りを排除する
ふくらはぎや太ももの前側の筋力を使って無理に立とうとすると、足首や膝関節が硬直してしまいます。
人体が本来持っているサスペンション機能が失われると、馬の揺れを直接体幹で受けることになり、脚がふらついて姿勢が崩壊してしまいます。
正しいメカニズムは、足首を完全にリラックスさせてかかとを自然に下げ、膝から下ではなく「股関節から太ももにかけての伸展運動(伸び縮み)」を使って骨盤を浮き上がらせることです。
馬の反動という外部エネルギーを受動的に利用し、おへそを斜め前上方へ突き出すようにすると、下半身がピタッと安定し、見栄えの良い美しいフォームに近づいていきます。
もちろん、これはあくまで一般的な目安ですので、ご自身の体格や馬の動きに合わせて、インストラクターの方にアドバイスをもらいながら微調整を行ってください。
乗馬で軽速歩の課題を克服する応用編
基礎的な仕組みや姿勢の作り方が理解できたら、次はいよいよ実践の場で直面する、より複雑な技術的課題の克服です。
乗馬の軽速歩を続けていると、お尻がひどく擦れて痛くなったり、意図に反して急に馬が駈歩を発進させてしまったりと、様々なトラブルに見舞われることがあります。
ここでは、そうした問題を根本から解決し、より快適で安全に乗りこなすための段階的な応用練習法や、自宅での身体機能の最適化について詳しくご紹介します。
疲れる原因と摩擦痛の解決策

軽速歩を少し長く続けただけで息が上がり、お尻の皮がむけてしまったり、全身が激しい筋肉痛に見舞われた経験はありませんか?
実は私も初心者の頃は、レッスンの翌日はロボットのような歩き方になるほど全身がバキバキになっていました。
この極度な疲労と摩擦痛の根本的な原因は、生体力学的な「摩擦」と「衝撃の吸収不全(無駄な力み)」にあります。
無意識の力みと呼吸のコントロール
特に、鐙を強く踏みしめすぎて膝や足首が硬直すると、脚が不安定になって身体全体が上下左右に大きくブレてしまいます。
人間の脳は賢いので、このブレを無意識のうちに修正しようと過剰な筋肉を動員してしまい、それが激しい疲労へと直結するのです。
また、恐怖心や緊張から無意識に息を止めてしまうと、全身の筋肉がガチガチに硬直してしまいます。
片側の脚(例えば左脚)ばかりを強く使ってバランスを取ろうとする非対称な乗り方をすると、骨盤の中心軸がズレ、お尻が鞍の上で横滑りして強い摩擦が生じます。
摩擦による疼痛と横滑りのメカニズム
解決策としては、まず鐙で踏ん張るのをやめ、両脚で均等に馬体を挟むことを意識して、お尻への体重のかかり方を左右対称に保つことです。
そして、馬に合図を送る際や緊張を感じた時は、意図的に「ふーっ」と深く息を吐き出してみてください。
深呼吸によって副交感神経が優位になり、筋肉がリラックスして馬の反動を柔らかく吸収できるようになります。
力で無理やり立つのではなく、馬の動きに「乗せてもらう」感覚を養うことが、痛みをなくす一番の近道です。
意図せぬ駈歩を防ぐ練習とコツ

レッスンの最中、馬が急にスピードを上げて駈歩(かけあし)の三拍子になってしまい、ヒヤッとして怖い思いをしたことはないでしょうか。
これは多くの場合、馬が勝手に暴走しているわけではなく、騎乗者自身のバランスの崩壊が引き金となっています。
馬が駈歩に逃げてしまう根本原因
体がグラグラと揺れて不安定になると、人は無意識のうちに脚で馬体を強くしがみついてしまいます。
敏感な馬は、そのしがみつきを「強い前進の指示(扶助)」だと誤認してスピードを上げてしまうのです。
また、馬自身が速歩のスピードに耐えきれず前のめり(前傾姿勢)になり、バランスを崩して駈歩に逃げてしまうケースもあります。
このようなバランスを崩した状態の馬に対して、無理に前進を要求し続けることは暴走のリスクを伴う非常に危険な行為です。
歩様をコントロールする具体的な対策
これを防ぐためには、歩様を確実にコントロールする基礎技術の再構築が求められます。
手綱を力任せに後ろへ引っ張るのではなく、拳を軽く握りこむことで推進のリズムを意図的にブロックし、「停止」や「常歩(なみあし)」へと段階的にシフトダウンさせる練習を反復しましょう。
また、馬のバランスを修正するための極めて効果的なトレーニングとして、直径20メートルの輪乗り(サークル運動)があります。
この円の軌道上で「軽速歩」と「座る速歩(正反動)」を数歩ずつ交互に繰り返す練習を行うことで、馬は後脚を深く踏み込むようになり、前傾したバランスが起き上がります。
結果として、意図せぬ駈歩発進を根本から抑え込むことが可能となります。
安全に関わる部分ですので、もし恐怖を感じたら無理をせず、すぐに指導員に声をかけて指示を仰ぐようにしてください。
乗馬の駆け足(駈歩)をマスター!初心者向け上達のコツと練習法
鐙脱ぎなどの効果的な練習法

通常の「1回立ち、1回座る」というリズムに身体が慣れてきたら、次に取り組みたいのが物理的な支えを意図的に排除する練習です。
その中でも、私が特におすすめしたいのが「鐙上げ(あぶみあげ)」、つまり鐙を外した状態での練習です。
鐙への依存を断ち切るアプローチ
鐙に頼ることができなくなるため、自分の体幹や内転筋群(内ももの筋肉)、股関節周辺の筋肉を使ってバランスを取らざるを得なくなります。
最初は「こんな状態で立てるわけがない!」と絶望するほどキツく感じますが、これを繰り返すことで足首での過度な踏ん張りが強制的にリセットされ、「膝から下」ではなく「膝から上」を使った正しい筋肉の使い方が体が覚えます。
手放しの練習も有効です
安全が十分に確保された従順な馬という条件下において、指導員に調馬索(ちょうばさく)を持ってもらい、手綱から手を離して行う訓練も極めて有効です。
キネティックチェーンを解放する手放し練習
無意識に手綱(馬の口)を頼りにして自分のバランスを取ってしまう悪癖や、立ち上がる動作に連動して拳が上に跳ね上がってしまう運動連鎖を、根本から断ち切ることができます。
最初は片手を離すことからスタートし、徐々に両手放しへと移行して、体幹部のみで自立して乗るアプローチが推奨されます。
これらの練習は非常に効果が高い反面、落馬のリスクも伴いますので、必ずインストラクターの許可と監視のもと、安全な環境が整った状態で実施してください。
正反動との交互反復で感覚を磨く
騎手が「自分の筋力で立ち上がる」という能動的な状態から、生体力学の理想である「馬の推進力に押し上げられる」という受動的な同調運動へと感覚を進化させるために、私が実践して最も効果を感じたのが「正反動(座ったままの速歩)との交互反復」です。
これは単調な上下運動を脱し、身体感覚を細分化して統合するための高度な練習法となります。
同調感覚を養うためのサイクル
具体的には、正反動によって馬の背中の反撞をダイレクトにお尻で感知し、その直後に軽速歩へ移行することで、自らの力ではなく馬のエネルギーを利用してフワッと立ち上がる究極のタイミングを掴む練習です。
最初は馬場の半周ごとに切り替えるような長い距離からスタートし、歩様の変化に対する恐怖心を払拭します。
慣れてきたら、10歩ごとに素早く切り替え、最終的には6歩〜4歩という極めて短いサイクルで交互に行います。
リズムの意図的なバリエーション
また、意図的にリズムのパターンを崩す練習も取り入れてみてください。
「立つ、立つ、座る」と空中で2回連続で姿勢をキープしたり、「立つ、座る、座る」と変則的なリズムを刻むことで、動的な状況下でもブレない強靭なバランス感覚を養うことができます。
連続して立った際にも脚が前に流れたり上半身が倒れたりしないよう、姿勢を自己点検する絶好の機会にもなります。
この練習を通じて、馬との一体感はこれまでとは別次元のレベルへと引き上げられるはずです。
上達を加速させる自宅での練習法

乗馬上達のためのアプローチは、実は馬場の上だけに限定されるものではありません。
週末の限られた騎乗時間だけでなく、自宅でのちょっとした身体機能の最適化を取り入れることで、上達のスピードはぐんと上がります。
私自身、平日のデスクワークの合間にインナーマッスルの強化を取り入れたことで、馬上での姿勢が随分と安定しました。
(出典:厚生労働科学研究成果データベース『乗馬の活用によるリハビリテーションの効果に関する学際的研究』、厚生科学研究費補助金)の報告にも示されている通り、乗馬の動きは体幹や身体平衡の維持に関連する筋緊張をもたらし、身体機能の向上に直結する運動です。
インナーマッスルを鍛えるクランチ
特におすすめなのは、腹直筋を鍛える「クランチ」です。
完全に起き上がる必要はなく、仰向けで膝を立て、息を深く吐きながら肩甲骨が床から僅かに離れる程度まで上体を持ち上げます。
腰が床から浮かないように体幹の等尺性(アイソメトリック)な緊張を維持することが、馬上でのブレない姿勢作りに直結します。
体幹の安定に関わる腹横筋を鍛えるにはプランクやドローインを組み合わせることをお勧めします。
臀筋群と体幹の連動性を高める自重トレ
さらに、臀部(お尻の筋肉)と体幹の連動性を高める自重トレーニングも非常に有効です。
正座に近い状態からつま先を立てて両手を前方に伸ばし、手前に腕を引く動作と同時にお腹を引き締め、背骨を真っ直ぐ保ったままお尻を上方へ引き上げます。
これは馬上における「胸を張り、腹圧を保ちながら骨盤を浮かす」という基本動作と生体力学的に完全に一致しています。
また、騎乗中の集中力低下や判断の遅れを防ぐため、軽いジョギングなどの有酸素運動で心肺機能を向上させることも大切です。
(※怪我のない範囲で行い、健康に不安がある方は事前に医師などの専門家にご相談のうえ実施してください)
まとめ:乗馬の軽速歩で人馬一体に!

今回は、私がこれまでに実践や失敗を通して学んできた情報をもとに、初心者が直面する壁とその解決策について、基礎理論から応用練習までを徹底的に解説させていただきました。
こうして振り返ってみると、乗馬の基本中の基本と言われながらも、極めて緻密な生体力学的な合理性が要求される、非常に高度な技術であることがお分かりいただけるかと思います。
最初は、馬の力強い二拍子の動きについていけず、体がバラバラになってしまうような絶望感に陥るかもしれません。
しかし、坐骨を中心とした骨盤の正確な配置、Z軸に対する重心線の維持、小指の緊張緩和がもたらす腕の自由度、そして何よりも馬の推進メカニズムとの絶対的なタイミングの同調。
これらの一つ一つを頭と体で理解し、筋力による力任せの踏ん張りを排除していくことで、ある日突然、嘘のようにフワッと馬のエネルギーに押し上げられ、完全に一体になれる瞬間がやってきます。
その瞬間に得られる心地よさと深いコミュニケーションの喜びは、言葉では到底言い表せないほど素晴らしいものです。
焦らず、恐怖心を深呼吸で和らげながら練習を続けていけば、必ず上位の次元へと到達できるはずです。
最終的な判断やご自身の癖に合わせた詳細な技術指導については、通われている乗馬クラブの専門の指導員の方にしっかりご相談くださいね。
この記事が、皆さんの週末の乗馬ライフをより安全で、楽しく充実したものにするためのヒントとなれば幸いです。

