
日々の忙しさやストレスから少し離れて、新しい趣味を始めたいと考えている方は多いのではないでしょうか。
そんな大人の習い事として、いま密かに注目を集めているのが乗馬です。
動物と触れ合う非日常的な体験はとても魅力的ですが、いざ始めようと思うとさまざまな疑問が浮かびますよね。
乗馬の費用や相場はどれくらいかかるのか、どんな服装を用意すればいいのか、といったお金や準備に関する不安があるかもしれません。
また、運動神経がなくても大丈夫なのか、一人での参加でも浮かないか、ダイエット効果は本当にあるのかなど、自分にもできるのかどうか悩んでしまうこともあるでしょう。
さらに、たくさんある中から失敗しないクラブの選び方を知りたいという声もよく耳にします。
この記事では、乗馬に興味を持っている大人の皆さんに向けて、気になる疑問や不安を一つずつ丁寧にひも解いていきます。
最後までお読みいただければ、乗馬という素晴らしい世界へ一歩を踏み出す勇気がきっと湧いてくるはずです。
- 乗馬が大人にもたらす心身のメリットとダイエット効果
- 運動神経や年齢にかかわらず一人でも安心して始められる理由
- 入会金や月会費など乗馬にかかる費用のリアルな相場
- 失敗しない乗馬クラブの選び方と必要な道具の揃え方
大人の習い事に乗馬を選ぶメリット

乗馬は単に馬に乗って走るだけのスポーツではありません。
大人の習い事として選ばれるのには、心と身体の両面に働きかける深い理由があります。
ここでは、乗馬が私たちにもたらしてくれる多角的なメリットについて詳しく見ていきましょう。
運動神経がなくても楽しめる理由

新しいスポーツを始める際、自分の運動神経や体力に自信がなくてためらってしまうことはありませんか。
実は、一般的な乗馬においては、瞬発力や極端に高度な筋力といったものは必ずしも必要ではありません。
もちろん正しい姿勢を保つための体幹やバランス能力は必要ですが、前に進むための強力なエンジンは自分自身の筋肉ではなく、パートナーである馬が提供してくれるからです。
テニスや野球のように飛んでくるボールに素早く反応したり、ゴルフのように複雑なスイングフォームを筋肉に記憶させたりするような、いわゆる「運動神経」は求められません。
乗馬の基本は、人間の力で巨大な馬をねじ伏せることではなく、馬の揺れに対して自分の重心を同調させ、バランスを保つことに尽きます。
これは、どちらかというと自転車に乗る感覚や、バランスボールの上に座る感覚にとてもよく似ています。
一度バランスの取り方を身体が覚えてしまえば、誰でも自然に乗りこなすことができるようになるのです。
むしろ、腕力に頼って手綱を強く引きすぎたり、恐怖心から身体をガチガチに固めてしまう人よりも、余計な力みが抜けてリラックスして馬に身を任せられる人の方が、結果的に上達が早い傾向すらあります。
スポーツ経験が少ない大人の方でも、全く問題なく取り組めるのが乗馬の素晴らしいところです。
最初の体験レッスンや初心者のクラスでは、指導員が「調馬索(ちょうばさく)」と呼ばれる長いロープを持って馬を安全にコントロールしてくれます。
そのため、騎乗者は馬を操縦するプレッシャーから解放され、ただ馬の背中の揺れに慣れ、バランスを取ることだけに集中できる環境がしっかりと用意されています。
馬は非常に繊細な感覚を持った動物であり、上に乗っている人間の緊張や力みを敏感に感じ取ります。
だからこそ、運動が苦手だと感じている人ほど、余計な力を抜いて馬との一体感を楽しむことができる素質を秘めているのです。
乗馬クラブにいる馬たちは、人を乗せるための特別な調教を長期間受けてきたプロフェッショナルです。
初心者の予測不可能な動きに対してもパニックを起こさないよう訓練されているため、馬に全く触ったことがない方でもすぐに心を通わせることができますよ。
このように、運動への苦手意識は乗馬の世界では決してマイナスにはなりません。
馬の力を借りて成立するスポーツだからこそ、運動神経という壁を軽やかに越えて純粋に楽しむことができるのです。
乗馬がもたらすダイエット効果

乗馬は馬の背に座っているだけに見えるかもしれませんが、実は全身の筋肉をフル活用するハードな有酸素運動です。
実際に騎乗してみると分かりますが、馬の歩く独特のリズミカルな揺れに対して、私たちは落馬しないよう無意識にバランスを取ろうとし続けます。
この姿勢制御の過程において、平地での日常生活や一般的なマシントレーニングでは動員されにくいインナーマッスル(深層筋)が強制的に活性化されます。
正しい騎乗姿勢を持続するためには、腹筋群、背筋、さらには内ももの筋肉を持続的に使い続ける必要があり、これが体幹の著しい強化に直結します。
体幹が鍛えられることで、長年のデスクワークで染み付いた猫背などの不良姿勢が自然と矯正され、背中から腰にかけての後ろ姿を美しく保つ効果が期待できます。
また、騎乗中は常にバランスをとるためのエネルギーを消費し続けるため、意外なほどカロリー消費量が多いのも特徴です。
実際に、国が発表している運動強度の指標でも、乗馬の運動効果は高く評価されています。(出典:国立健康・栄養研究所『改訂版「身体活動のメッツ(METs)表」』)
このデータによれば、馬がゆっくり歩く「常歩(なみあし)」の段階でやや速めのウォーキング(約3.8 METs)と同等の運動強度があり、小走りの「速歩(はやあし)」になればさらに強度が上がります。
楽しみながら風を切り、馬と触れ合っているうちに、いつの間にか全身が汗ばむほどの運動になっているため、つらい筋トレが続かないという方にもぴったりです。
さらに、馬に乗る前後の時間には、専用のブラシで馬の体を磨いたり、重い鞍(くら)を運んで馬の背中に乗せたりといったお世話の作業が発生します。
実はこうした馬のお世話自体もかなりの運動量になり、トータルで見ると非常に効率的なエクササイズとして機能するのです。
ダイエットや美しいボディメイクを目的とする大人にとって、楽しみながら自然と体を絞っていける乗馬は、まさに一石二鳥の習い事と言えるでしょう。
※ダイエットや姿勢改善の効果、カロリー消費量には個人の体格や騎乗時間によって差があります。
※極端な腰痛やヘルニアなどの持病をお持ちの方は、症状が悪化する可能性もあるため、念のため事前に専門の医師にご相談の上、自己責任でご判断ください。
セラピー効果で心身をリフレッシュ

大人が乗馬に惹かれる最大の理由の一つが、アニマルセラピー(ホースセラピー)としての圧倒的な癒やしの効果です。
現代人は、仕事のプレッシャーや複雑な人間関係、そして常にスマートフォンから流れてくる膨大な情報に囲まれ、脳も心も常に緊張状態にあります。
そんな日常から完全に切り離された乗馬クラブという空間で、巨大で温かい馬と触れ合う時間は、まさに至福のリフレッシュタイムとなります。
馬の平熱は人間よりも少し高い37.5度から38度くらいあり、またがるとその温もりが鞍越しにじんわりと足腰の筋肉に伝わってきます。
この物理的な温かさが筋肉の緊張をほぐすと同時に、馬の穏やかな息遣いを聞くことで、不思議と人間の心拍数も落ち着いてくるのです。
体重500キロ前後の大きな動物でありながら、本質的には草食動物特有の穏やかさと、人間に対する従順さを持っています。
言葉を持たない馬との純粋な非言語コミュニケーションは、深くリラックスした状態を誘発し、ストレスを和らげる効果があると言われています。
馬は人間の社会的地位や肩書き、外見などを一切気にすることなく、ただその瞬間の接し方や愛情だけで私たちを評価してくれます。
ブラッシングをしてあげて気持ちよさそうに目を細める表情を見たり、にんじんを差し出して優しく食べてくれる温かい唇の感触を感じたりするだけで、日常のささくれ立った感情がすーっと溶けていくのを感じるはずです。
実際にホースセラピーは、欧米でも補完的な療法として実践が広がっており、精神的な安定効果についての研究が進んでいます。
週末にたった数時間だけ馬と一緒に過ごすだけで、月曜日からまた頑張ろうと思える活力が湧いてくる。
現代社会で懸命に頑張る大人にとって、馬はただの乗り物ではなく、心に寄り添ってくれるかけがえのないパートナーであり、最高のメンタルケアの場となるのです。
年齢を気にせず長く続けられる理由

スポーツの中には、年齢を重ねるごとに体力的な限界を感じてしまい、続けるのが難しくなるものも少なくありません。
特に走る・跳ぶといった膝や腰に強い衝撃がかかるスポーツは、怪我のリスクも高まり、大人の趣味としてはハードルが上がってしまいます。
しかし乗馬は、年齢制限の壁が事実上存在せず、何歳からでも始められる貴重な生涯スポーツとして確固たる地位を築いています。
実際に全国の乗馬クラブを見渡してみると、50代、60代、さらには70代のシニア世代になってから、健康維持や新しい生きがいとして乗馬を始める愛好家が驚くほどたくさんいらっしゃいます。
乗馬が長く続けられる最大の理由は、馬が人間の足の代わりとなって動いてくれるため、関節への負担が少なく、自分自身の心肺機能の限界まで追い込む必要がないからです。
もちろん筋力や体力があるに越したことはありませんが、技術が上達すればするほど無駄な力が抜け、馬との調和だけで優雅に騎乗できるようになります。
つまり、力任せの若さよりも、経験と落ち着きを持った大人の余裕のほうが、結果的に馬を美しく乗りこなすための武器になるのです。
また、乗馬クラブには幅広い年齢層の人々が集まるため、年齢や職業の枠を超えた新しいコミュニティに参加できるという魅力もあります。
同じ馬を愛する仲間として、休憩時間に馬の話題で盛り上がったり、上達のコツを教え合ったりする時間は、大人になってからの貴重な交流の場となります。
自分のペースで無理なく取り組めるため、体力の衰えを心配しすぎる必要は全くありません。
退職後の趣味として全国の乗馬クラブを巡ったり、ライセンス取得という明確な目標に向けてコツコツと練習を重ねたりと、ライフステージに合わせて様々な楽しみ方ができるのも乗馬ならではの特権です。
いつまでも若々しい姿勢を保ち、動物との絆を深めながら一生涯を通じて情熱を傾けられる趣味に出会えることは、人生を極めて豊かにしてくれます。
一人で参加する人が多い安心の環境

「一人で乗馬クラブに入会して通うのは、周りから浮いてしまって恥ずかしいのではないか」という対人関係の不安を抱く方は非常に多いです。
習い事というと、友人同士でワイワイと誘い合って通うイメージがあるかもしれませんが、乗馬の世界は少し事情が異なります。
実際の乗馬クラブを見渡すと、友人や家族と連れ立ってくるケースもありますが、多くの人が一人で参加していると言われることが多いです。
乗馬は、野球やサッカーのように集団で行うチームスポーツとは根本的に性質が異なります。
騎乗中は、自分自身の身体の微妙なバランス感覚と、目の前の馬との1対1の対話に極限まで深く集中しなければなりません。
自分がミスをしたからといってチームメイトに迷惑をかけるようなプレッシャーもありませんし、他人の目を気にしている余裕もないのが実情です。
そのため、誰に気兼ねすることもなく、一人でストイックに没頭しやすい環境がクラブ全体に自然と形成されているのです。
自分の仕事の休みや都合に合わせて自由にレッスンの予約を入れ、自分のペースで技術を磨いていける「一人客」の方が、結果的に人間関係のしがらみもなく長く継続しやすいという実用的な利点があります。
また、一人で通い始めたとしても、決して孤独というわけではありません。
クラブのスタッフやインストラクターは、馬という共通の話題を通じて気さくに話しかけてくれますし、馬の手入れをしている洗い場などでは、隣になった会員同士で自然な会話が生まれることも日常茶飯事です。
大人の習い事として、家庭でも職場でもない、素の自分に戻れる「サードプレイス(第三の居場所)」として乗馬クラブを活用している方はたくさんいます。
一人で参加することに対する心理的なハードルは、一歩クラブに足を踏み入れてしまえば、完全に杞憂だったと気づくはずです。
大人の習い事である乗馬の費用と準備
乗馬の魅力は十分に理解できても、やはり一番のネックとして立ちはだかるのがお金のことや、専門的な道具の準備についてですよね。
「乗馬=一部の富裕層だけの優雅な道楽」という古いイメージが先行してしまい、多額の借金をしなければ始められないのではないかと誤解している方も少なくありません。
しかし、業界の料金構造を正しく理解し、自分に合ったスタイルを選べば、決して手の届かない習い事ではありません。
ここからは、具体的な費用相場や賢い道具の揃え方について、余すところなく解説していきます。
初期費用となる入会金の目安

乗馬クラブに正式に入会して継続的なレッスンを受けていく場合、一般的なスポーツジムと同じように、まずは「入会金」が必要となります。
この入会金が、乗馬を始める際の初期費用の中で最も大きなウェイトを占めることになります。
入会金は、選ぶクラブの格式や立地、そして何より「会員区分」によって劇的に金額が変わってくるのが特徴です。
利用日時の制限がなく、土日祝日を含めていつでも自由に長期間通うことができる標準的な「正会員」の場合、およそ50,000円から250,000円前後と、クラブによってかなりの幅があります。
大手の乗馬クラブや、都心からアクセスの良い高級クラブになると、この正会員の入会金が高額に設定されている傾向があります。
しかし、初期費用を抑えたい大人にとって強力な味方となるのが、条件付きの会員プランです。
例えば、平日しか通わない人向けの「平日限定会員」や、まずは1年間だけお試しで通ってみたい人向けの「1年短期会員」などのプランを利用すれば、入会金を30,000円から100,000円程度に大幅に圧縮することが可能です。
さらに、多くの乗馬クラブでは春や秋のスポーツシーズンに合わせて、「入会金半額キャンペーン」や「体験当日入会で初期費用無料」といったお得なプロモーションを頻繁に実施しています。
これらのキャンペーン時期を戦略的に狙って入会することで、驚くほどリーズナブルに乗馬ライフをスタートさせることも夢ではありません。
ゴルフの会員権を購入することに比べれば、実ははるかに手軽に始められるのが現代の乗馬事情なのです。
ただし、初期費用が安いからといって自分のライフスタイルに合わない平日限定プランなどを選んでしまうと、いざ土日に乗りたいと思った時に割高なビジター料金を追加で請求されることもあるため、事前の慎重なプラン選びが不可欠です。
乗馬にかかる費用と相場の仕組み

初心者が最も混乱しやすいのが、乗馬クラブ特有の料金構造です。
一般的なフィットネスクラブのように「月額1万円を払えば毎日通い放題」というわけにはいきません。
乗馬クラブの料金体系は、基本的に「入会金」「月会費」「騎乗料」の3段階に完全に分離されていることをまずは理解しておく必要があります。
「月会費」は、クラブの施設維持費や、何十頭もの馬たちに毎日与える飼料代、健康管理費などに充てられる固定費で、相場は10,000円〜18,000円前後です。
これは馬に乗らなくても毎月必ず発生するランニングコストとなります。
そして、実際にクラブに行って馬に乗り、レッスンを受けるたびに都度支払う必要があるのが「騎乗料」です。
1回の騎乗(通常45分程度)につき、2,000円〜5,000円程度が相場となっており、月に何度通うかによってトータルの出費が変動する仕組みです。
| 会員区分 | 入会金の相場(初期のみ) | 月会費の相場(固定費) | 1回の騎乗料(都度払い) |
|---|---|---|---|
| 正会員 | 50,000円〜250,000円 | 10,000円〜18,000円 | 2,000円〜5,000円 |
| 限定・短期会員 | 30,000円〜100,000円 | 5,000円〜16,000円 | 2,000円〜5,000円 |
この基本の3段階料金に加えて、実際に通い始めると見落としがちな「隠れたコスト」が存在します。
例えば、落馬などの万が一の怪我に備えるためのスポーツ安全保険料が年間で数千円から15,000円程度かかります。
また、自分のヘルメットやブーツなどの重い道具を毎回自宅から持ち運ぶ手間を省くために、クラブの更衣室にある専用ロッカーを借りる場合は、年間で1万円〜2万円程度のロッカー代が発生します。
さらに、技術の上達を急ぐためにインストラクターとマンツーマンで練習する「特別指導料」や、自分と相性の良いお気に入りの馬を指定して乗るための「指名料」などが都度加算されることもあります。
これらを総合的に計算すると、大人が休日に週1回(月4回)のペースで趣味として通う場合、毎月の支払いは月会費と騎乗料を合わせて3万円〜4万円程度になることが多いです。
初年度にかかる費用の総額は、入会金や後述する道具代も含めて、およそ45万円から80万円の範囲に収まるのが一般的なリアルな相場観と言えます。
乗馬の習い事にかかる費用は高すぎる!?相場と内訳を徹底解説!
※ここに記載している各費用の金額や相場は、あくまで業界全体の一般的な目安です。
※クラブの立地(都市部か郊外か)や経営方針によって料金体系は大きく異なりますので、最終的な費用については必ずご自身で各乗馬クラブの公式サイトを確認し、不明点は直接お問い合わせください。
初回体験に最適な服装のルール

「乗馬を始めるなら、最初からあの貴族のようなピシッとした専用の服や、革のブーツを一式買い揃えなければならないのでは?」と不安に思って二の足を踏んでいる方もいるかもしれません。
結論から言うと、初回の体験レッスンや入会前のビジター利用の段階では、高価な乗馬服や専門の馬具を購入する必要は一切ありません。
安全に馬に乗るために絶対に必要な「ヘルメット」「乗馬用ブーツ」、そして落馬時に背骨や肋骨を守る「ボディプロテクター」といった安全装備は、すべて数百円から千円程度でクラブ側からレンタルを利用することが可能です。
この段階で体験者自身が自宅のクローゼットから用意すべき服装のルールは、驚くほどシンプルで日常的なものです。
上半身は、季節に応じた動きやすい服であれば、Tシャツ、ポロシャツ、トレーナー、パーカーなど何でも問題ありません。
ただし、馬は視覚的に敏感な動物なので、風でバタバタと大きく音を立ててはためくような装飾の多い服や、極端に派手な蛍光色の服は避けたほうが無難です。
最も注意すべきは下半身の服装で、鞍(くら)や馬の体との強い摩擦から脚の皮膚を守るため、必ずくるぶしまで完全に隠れる長ズボンを着用してください。
生地が薄いスウェットやペラペラのナイロンパンツだと、馬体と擦れて内ももが痛くなる可能性があるため、デニム(ジーパン)やチノパンなど、ある程度厚手でストレッチ性のある素材が強く推奨されます。
足元は、レンタルのブーツを借りるまでの間、厩舎(きゅうしゃ)周辺を歩き回るため、汚れても構わないスニーカーなどの運動靴を履いていきましょう。
手綱をしっかりと握る際の手の保護と滑り止めのために、専用のグローブがなくても、手のひらにゴムのイボイボがついた軍手を持参するだけで十分に対応できます。
逆に、スカート、短パン、ガウチョパンツのように裾が広がりすぎるズボン、そしてサンダルやヒールの高い靴といった、肌の露出が多く安全性を著しく損なう服装は厳禁とされています。
まずは家にある動きやすい服装で気軽に参加し、乗馬の楽しさを肌で感じてみることからスタートしてください。
継続に必要な道具と賢い購入戦略
体験レッスンを経て乗馬の魅力にハマり、正式に入会して本格的に継続していくと決断した段階で、いよいよ自分専用の道具を揃えるステップへと進みます。
毎回レンタル品を使っても良いのですが、サイズが微妙に合わなかったり、他人が汗をかいた使い回しに抵抗を感じたりすることもあるでしょう。
何より、自分の体にぴったりとフィットした道具を使うことは、正しい姿勢の習得という技術の上達に直結し、万が一の落馬時の安全性も飛躍的に高めてくれます。
一般的に、初心者が最初に揃えるべきとされているのが以下の「馬具6点セット」です。
1つ目は落馬時の頭部保護を担う「ヘルメット」、2つ目は胴体を守る「ボディプロテクター」、3つ目は手綱の摩擦から手を守る「専用グローブ」です。
特にプロテクターは近年進化が著しく、通常時はベストのように軽く動きやすいのに、落馬して馬から離れた瞬間に内蔵されたガスボンベが作動してエアバッグが膨らむ「エアバッグプロテクター」が主流となっており、安全性が格段に向上しています。
4つ目は、お尻や膝の内側にシリコンなどの強力な滑り止め加工が施された乗馬専用のパンツである「キュロット」です。
5つ目と6つ目は足元を守る装備で、膝下までを覆う「ロングブーツ」か、足首までの「ショートブーツ」とふくらはぎに巻き付ける「チャップス」の組み合わせのどちらかを選びます。
これらの道具を、海外の有名ブランドの単品でこだわって一つずつ買い集めると、あっという間に10万円から20万円以上の出費になってしまいます。
そこで強くおすすめしたいのが、乗馬用品専門のオンラインストアなどが販売している「初心者向けビギナーセット」を活用することです。
ヘルメットからブーツまでの基本セットが3万円から4万円台で販売されており、単品で揃えるよりも数万円単位で安く、一気に必要なものを揃えることができます。
一度道具一式を揃えてしまえば、あとは適切なお手入れを続けることで数年間は問題なく使い続けることができます。
本革のブーツやチャップスは、使用後に馬の汗や泥を専用のレザー用クリーナーで落とし、定期的にオイルを塗り込むといったメンテナンスを行うことで、カビを防ぎ寿命を大幅に延ばせます。
2年目以降は、手綱との摩擦で穴が空きやすいグローブなどの小物類を数千円で買い替える程度で済むため、長期的なランニングコストは実はとても安定したものになるのです。
失敗しない乗馬クラブの選び方

大人の習い事として乗馬を成功させ、途中で挫折することなく長期的な満足度を得るための最大の分岐点は、「どの乗馬クラブを選ぶか」という最初の決断にかかっています。
家からのアクセスの良さ、クラブハウスの豪華さ、あるいはインターネット広告の派手さやキャンペーンの安さだけで安易に入会を決めてしまうと、「思っていた雰囲気と違った」「指導が厳しすぎて楽しくない」と後悔することになりかねません。
複数のクラブを比較検討する上で、専門家も推奨する究極の評価指標があります。
それは、スタッフの言葉でも施設の綺麗さでもなく、「その施設にいる馬たちの状態そのもの」を注意深く観察することです。
乗馬クラブは、顧客である私たち人間に対するサービス業であると同時に、馬という動物の労働と献身によってのみ成立している事業です。
したがって、声なき従業員である馬たちがどのように管理され、扱われているかが、そのクラブの運営体制、指導方針、そして経営者の倫理観を如実に物語るのです。
見学や体験レッスンに訪れた際には、まず馬体がお腹のあたりまで丸みを帯びてふっくらしているかを確認してください。
あばら骨や腰骨が浮き出て痩せ細っている馬が多いクラブは、十分な栄養管理が行われていない証拠であり、絶対に避けるべきです。
次に、馬の背中やお腹、わき腹の周辺に不自然な傷や擦れがないかを見ます。
傷がある場合は、インストラクターが馬に対して乱暴な扱いをしていたり、会員に対して馬を無理やり動かすような不適切な騎乗指導(過度なムチの使用など)が日常的に行われている可能性が高いです。
さらに、馬が自分の部屋(馬房)にいる時の表情や耳の動きにも注目してください。
人間が近づいた時に、耳を後ろにペタンと伏せて威嚇してきたり、怯えて壁の方ばかり向いている馬が多い環境は、馬が強いストレスを抱えている危険信号です。
逆に、人が近づくと興味を持って穏やかな表情で鼻をすり寄せてくる馬が多いクラブは、スタッフから愛情を持って大切に扱われ、動物福祉がしっかりと守られている最高の環境だと言えます。
馬の健康と幸せを第一に考えている乗馬クラブは、顧客である初心者に対しても、必ず誠実で安全、かつ丁寧な対応をしてくれます。
即決はせず、可能であれば2〜3箇所の異なる乗馬クラブで体験レッスンを受講し、馬たちの表情とインストラクターとの相性をしっかりと肌で感じてから、自分に最も合うクラブを見つけ出してください。
まとめ:大人の習い事に最適な乗馬

ここまで、大人の習い事として注目を集める乗馬について、その魅力から費用、準備、そしてクラブの選び方に至るまでを詳しく解説してきました。
乗馬は、日々のストレスや複雑な人間関係から解放される圧倒的な癒やしの効果と、インナーマッスルを鍛え美しい姿勢を作る高度な運動効果を同時に得られる、極めて稀有で素晴らしいアクティビティです。
費用についても、業界の料金構造を正しく理解し、自分のライフスタイルに合った会員プランや、コストパフォーマンスに優れたビギナーセットの道具を戦略的に選ぶことで、決して手の届かない夢のスポーツではなくなります。
運動神経や事前の体力に自信がなくても、馬という温かいパートナーがすべてを受け入れ、あなたの足となって前へと進んでくれます。
年齢を問わず、一人でストイックに没頭できる環境が整っているのも、多忙な現代の大人にとって大きなメリットです。
基礎を身につけたら、少しずつ上のクラスに挑戦したり、全国共通のライセンス(技能認定審査)の取得を目指して自分の成長を可視化したりと、楽しみ方は尽きません。
さらに上達すれば、クラブの枠を飛び出して、海岸や大草原、山道といった大自然の中を馬とともに駆け抜ける「外乗(トレッキング)」という究極の非日常体験にも挑戦できるようになります。
もし、あなたの心の中に少しでも「馬に乗ってみたい」という小さな火が灯ったのであれば、迷うことなく、まずは週末を利用してお近くの乗馬クラブの体験レッスンに足を運んでみてください。
大きな瞳で見つめてくる馬の温もりに直接触れた瞬間、きっとあなたの人生に新しい、そしてかけがえのない喜びの扉が開くはずです。

